父親が任意に認知をしてくれない場合、その子どもや母親等は認知をするように求める訴えを提起することができます(民法787条本文)。

認知の訴えの相手方は父親が生きている間は父親ですが、父親が死亡した後も検察官を相手方として認知の訴えをすることができます(人事訴訟法42条1項)。ただ、父親が死亡した場合には、原則として死亡の事実を知った日から3年以内に訴えを提起しなければならない点に注意が必要です。

任意に認知をする場合は戸籍法の定める届出をすればよく(民法781条)、親子関係の証明も不要ですが、認知の訴えを認めてもらうためには、生物学上の親子関係が存在することを証明しなければなりません。生物学上の親子関係が存在することを証明する上では、

  1. 妊娠当時、父親と母親との間に性的関係があったこと、
  2. 血液型が一致すること、DNA型が一致すること等、その他人類学的検査からしても一致すること、
  3. 子どもに命名したり、生活費を送るなど、父親としての行動を取ったり、子どもの母親を妻として迎えたいと親族に述べたこと等の事情、

を証明していくことが重要になってきます。

なお、認知の訴えを提起する前に、原則として調停を申し立てて話し合いの場を設けることが必要になってきますが(家事事件手続法257条1項、244条)、仮に、調停で話し合いをした結果、

  • 申立ての内容通りの審判を受けることについて当事者間に争いがなく、
  • 申立ての原因となる事実関係についても当事者間に争いがなく、
  • 家庭裁判所が必要な事実調査をした上で当事者間の合意を正当と認めた場合は、

認知の訴えに至るまでもなく、“合意に相当する審判”という形で認知を認めてもらうことができます。もっとも、“合意に相当する審判”は当事者や利害関係人から2週間以内に異議を出されると効力を失ってしまいますので(家事事件手続法279条、280条)、周囲の関係者も含めて争いの激しい事件では認知の訴えによって解決せざるを得ないように思われます。