相手方が「強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき」(民法770条1項4号)には離婚が認められます。

「強度の精神病」とは夫婦間の本質的な関係である同居・協力・扶助の義務を果たすことができないほど重症であることを意味し、「回復の見込みがない」とは不治の病気であることを意味しています。

このような「強度の精神病」に当たるかや、「回復の見込みがない」と言えるかについては裁判所の法律的判断になりますが、専門の医師の鑑定等の客観的な証拠が必要となってきます。

過去の裁判例では、一時よりかなり軽快しているとはいえ、通常の社会人として復帰して一家の主婦としての任務に堪えられる程度にまで回復できる見込みが極めて乏しい事案(最判昭和45年11月24日民集24巻12号1943頁)、妻の言動に積極性がなく病識を欠いていて感情障害が著しく、統合失調症の人格荒廃過程にあり、8回も再発を繰り返していて、主婦としての日常生活の能力もない場合(金沢地判昭和36年5月10日下級民集12巻5号1104頁)には「強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき」に該当すると判断されています。

ところで、相手方が回復の見込みのない強度の精神病にかかっている場合であったとしても、相手方の今後の療養や生活などについて出来る限りの“具体的な対応”をして、将来についてもその対応の見込みがなければ、離婚を認めないとしている点には注意が必要です(最判昭和33年7月25日民集12巻12号1823頁)。

もっとも、裁判所はこの“具体的な対応”の内容については次第に緩やかに考えるようになっていると言われています。

例えば、精神病の妻の離婚後の生活について、生活保護の措置を講じることについて福祉事務所の了解を得ているだけでなく、離婚後も面会に赴き、妻と子との面会にも協力し、妻を精神的に援護する旨を誠実に表明している事案では、“具体的な対応”をしているものとして夫からの離婚請求が認められています(東京高判昭和58年1月18日家裁月報36巻4号73頁)。