個人の財産と会社の財産

会社経営者の方が離婚をする場合にまず相談されるのが、会社の財産も財産分与の対象にならないかという点についてですが、経営者の方の財産と会社の財産はあくまで別ですので、直接的に会社の財産が財産分与の対象になることはありません。もっとも、株式を所有している場合には、株式の評価という形で会社の財産が評価されることはあります。

他方で、個人事業主の方の場合、個人の財産と会社の財産という区別がありません。
そのため、事業のために使っている預貯金や不動産等も原則として財産分与の対象になり得ることになります。

特有財産という考え方

会社経営者の方や個人事業主の方に共通して言えるのは、様々な財産を所有していることが多いという点です。
そのため、相談に来られる方はそれらの財産の半分を離婚する配偶者に渡さなければならないのだろうかと心配されています。

そのような方に最初にご質問するのは、「会社はいつから経営されていますか?」、「事業はいつから開始されていますか?」という点です。

なぜなら、婚姻前に所有していた財産は“特有財産”と呼ばれ、財産分与の対象にそもそもならないからです。
財産分与の対象になるのは、あくまで婚姻後に夫婦が協力することで蓄積された財産についてですから、婚姻前から所有していた財産か、婚姻後に所有することになった財産かは明確に区別することが重要です。

このような区別には専門家である弁護士の法的知識や証拠収集が必要になってきますが、婚姻前後の財産を区別してみると、意外と財産分与の対象になる財産が少ないことが明らかになって安心していただけることも少なくありません。

寄与度という考え方

また、婚姻後に所有することになった財産が多い場合も、その財産を得ることができた貢献の度合いを踏まえて清算の割合を決めるべきであるという“寄与度”と呼ばれる考え方があります。
“寄与度”の主張が認められるか否かは、大きく分けると、①夫婦がいわゆる共稼ぎなのか、②配偶者が専業主婦(夫)なのか、③配偶者が事業を手伝いながら家事も行っているのか、で判断が違うと言われています。

具体的には、

  1. 夫婦が共稼ぎの場合は収入額に著しい差がない限りは原則2分の1と考えられ、
  2. 配偶者が専業主婦(夫)の場合は、寄与の割合を3~5割とする傾向があり、
  3. 家業を手伝いながら家事も行っている場合は、共稼ぎに近いものから専業主婦(夫)に近いものまで様々なので、その家業が一方当事者の才能によるものなのかどうかを考慮して具体的に寄与度を判断する傾向がある

とされています。

もっとも、夫婦平等の観点から、原則寄与度は2分の1とすべきだという考えが根強いので、寄与度の主張をする場合には、専門家である弁護士に相談しながら、根拠に基づいて具体的にしなければ簡単には認めてもらえないことに注意が必要です。

株式について

会社経営者の方は当然、会社の株式を所有されていると思います。
冒頭で述べたとおり、この会社の株式につきましては、特有財産でない限り、財産分与の対象になりますので注意が必要です。

基本的に、経営に関与していない配偶者は株式自体を取得するのではなく、株式の時価相当額の半分を財産分与として求めてくると思います。
上場株式でもない限り、株式の時価の計算は簡単ではなく、その計算方法には様々な種類があります。

どのような計算方法を採用した方が適切な株式の時価を計算することができるのか疑問がある時は、当事務所弁護士が提携している税理士や公認会計士にも相談しながら助言させていただくようにしています。