配偶者が音信不通になっている場合については、音信不通の実態や期間に応じて複数の離婚の方法が考えられます。

第一に考えられる離婚の方法は、「悪意の遺棄」(民法770条1項2号)を理由とする離婚です。

“音信不通”とはいっても、弁護士が戸籍の附票を調査したり、相手方の携帯電話会社に問い合わせをしたりすることによって相手方の居場所が判明することもあります。その場合は、通常通り、離婚調停を申し立てて離婚の手続を進めることになります。

他方、住民票を移していなかったり、相手方が携帯電話を解約していたりすると、相手方の居場所を突き止めることができない場合があります。離婚調停は離婚について話し合う場ですので、相手方の居場所が分からず、相手方を呼び出すことが出来ない場合には離婚調停を申し立てる意味がありません。そのため、この場合には離婚訴訟を提起して、裁判所に離婚の可否を決めてもらうことを検討すべきことになります。

しかしながら、離婚訴訟を提起する場合にも、原則として相手方に裁判所からの書類が届く必要があるため、“公示送達”という制度を利用しなければなりません。公示送達は、相手方の住所が分からない場合に、裁判所の掲示板に呼出状を掲示して2週間が経過することによって、相手方に裁判所からの書類が相手方に届いたものとみなす制度です。

公示送達が認められると、相手方は自分が知らない間に離婚されるおそれがあるわけですから、裁判所は公示送達を簡単には認めてくれません。公示送達を認めてもらうためには、戸籍の附票を調べて最後の住所を割り出したけれどもそこには住んでいなかったこと、相手方の親族にも問い合わせたけれども相手方の住所は分からないという回答であったこと、警察に対する捜索願の受理番号や警察署の担当者名を報告しなければなりません。

第二に考えられる離婚の方法は、「配偶者の生死が三年以上明らかでないとき」(民法770条1項3号)を理由とする離婚です。

この場合、自分との関係では音信不通でも、相手方の親族にはメールや電話連絡があったり、警察に捜索願を出す度に相手方が見つかる等して生存が確認できる場合には、生死不明にはなりません。

離婚訴訟を提起する場合には公示送達の制度を利用しなければならないことと、公示送達が簡単に認められないことについては既に説明したとおりです。

第三に、失踪宣告制度を利用することによって、相手方との婚姻関係を解消することが考えられます。

具体的には、相手方の「生死が七年間明らかでないとき」には、家庭裁判所に請求することによって失踪宣告をしてもらうことができ(民法30条1項)、失踪宣告がなされると相手方はその7年間が経過した時点で死亡したものとみなされるため(同法31条)、婚姻関係が解消したこととなります。

この方法を利用する場合、相手方が死亡したとみなされることによって相続が発生することになるため、相手方に借金がある場合には相続放棄をする等の対応をする必要があることに注意が必要です。