専業主婦をしている妻が別居している夫に対して婚姻費用を請求したところ、夫から「住宅ローンを含めると既に婚姻費用相当額を支払っている。」と反論されて困っているという相談はよくあります。

たしかに、夫側からすると、「住宅ローンを支払うことで自由に使えるお金も減っているし、妻は家賃を支払わずに済んでいるのだから差し引かれて当然。」と考えるかもしれません。 

しかしながら、住宅ローンは夫婦で購入した不動産に関するものですから、離婚する際の財産分与の中で、売却代金から住宅ローンを差引いた金額を分配する等の形で調整をすべきで、少なくとも婚姻費用から住宅ローンの全額を差引くのは適切ではありません。

もっとも、住宅ローンが支払われていることにより、妻側が家賃を負担せずに済んでいることはたしかですし、算定表(http://www.courts.go.jp/tokyo-f/vcms_lf/santeihyo.pdf)を参考に決定される婚姻費用には家賃相当額も含まれています。

以上のような事情を反映した結果、実務では、年間の収入に合わせて通常かかるとされる住居関係費だけを婚姻費用から差し引いて調整することが多いように思います。

具体的には、妻が専業主婦で実際の収入がない場合は、住居関係費は通常2万7940円に抑えた生活をしているはずであると考えられていますので、婚姻費用からは2万7940円だけを差し引くという形になるのです。

住宅ローンはそもそも家賃等より高額ですし、婚姻費用から住宅ローンを差し引くなどと主張されると、手元に残る婚姻費用が少なくなったり、ほとんどなくなったりすることになりかねません。相手方からこのような主張をされてお困りの方は是非当事務所までご相談ください。

また、逆に、住宅ローンを支払っているのに婚姻費用を全額支払うように要求されて困っているという方も当事務所にご相談いただければと思います。