養育費を取り決めたにもかかわらず支払いが滞っている場合、強制執行手続により、相手方の給与や財産(預貯金、不動産等)を差し押さえるという対応策が考えられます。

もっとも、その場合、相手方の勤務先や預貯金が存在する金融機関の支店等を特定する必要があるところ、元配偶者の立場でこれらの情報を正確に調査することは非常に困難です。

そのような事情を踏まえ、民事執行法が改正され、令和2年4月1日より、裁判所を通した「債務者による財産開示手続」、「第三者からの情報取得手続」が利用できるようになりました。

 

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1 債務者による財産開示手続

裁判所が債務者(相手方)を呼び出して出頭させ、自身の財産状況を陳述(自己申告)させるという手続です。

この制度は、元々は平成15年の民事執行法改正により創設されたものですが、債務者が呼び出しを無視したり虚偽の陳述をした場合の罰則が軽く(30万円以下の過料)、実効性が低いため、ほとんど活用されていませんでした。

そこで、今回の民事執行法改正により、債務者が正当な理由なく出頭しなかったり、虚偽陳述した場合等には、刑事罰(6か月以下の懲役または50万円以下の罰金)が科せられることになりました。

これにより、債務者が正直に、自身の正確な財産状況を開示することを促す効果が期待できます。

 

2 第三者からの情報取得手続

裁判所が、債務者(相手方)以外の第三者に対して、債務者の財産に関する情報提供命令を発し、この命令を受けた第三者が裁判所に情報を提供するという手続です。

ここでいう「第三者」としては、金融機関(銀行、信金、労金、信組、農協等)、市町村、日本年金機構、登記所等があげられます。

金融機関であれば債務者の預貯金についての情報を、市町村や日本年金機構であれば市町村民税の事務、年金の事務を行う関係で債務者の勤務先の情報を、登記所であれば債務者が所有する不動産の情報を保有している可能性が高いためです。

 

3 給与債権に関する情報を調査できる!

上記手続を利用して、相手方の給与債権に関する情報を調査することができます。

具体的には、まずは、裁判所に「財産開示手続」の申立てを行います。

そして、「財産開示手続」を実施しても相手方の財産状況を把握することができなかった場合には、その後3年以内に、「第三者からの情報取得手続」の申立てを行います。

これにより、裁判所を通して、市町村や日本年金機構等から相手方の勤務先の情報提供を受け、その情報を用いて相手方の給与を差し押さえることで、養育費を回収することができるます。

 

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もっとも、上記手続を利用するためには、前提として、養育費について執行力のある債務名義(公正証書、調停調書、審判書、判決書)を有していることが必要です。また、その他にも、法律上いくつかの要件をみたさなければなりません。

 

養育費は、子どもが健やかに成長するために必要な費用であり、子どもの生活や将来を守るため、これを適切に取り決め、また、滞りなく受け取ることが重要です。

養育費に関する問題についてお困りの際には、是非、当事務所までご相談ください。