浮気等をした相手方から離婚を要求されるという事案もあります。けれども、相手方が夫婦の関係を破綻させているにもかかわらず、離婚が認められるのはあまりにも酷過ぎます。
そのため、裁判所は、夫婦の関係を破綻させた人物からの離婚請求については、

  • ①夫婦の別居期間が長く、
  • ②夫婦の間に成熟していない子どもがおらず、
  • ③離婚を認めても離婚された配偶者が精神的・社会的・経済的に極めて苛酷な状態に置かれることがない

場合等でなければ離婚することを認めないようにしています(最判昭和62年9月2日判タ642号73頁)。
なお、上記①、②、③は夫婦の関係を破綻させた人物からの離婚請求を認めるための一般的な条件であって、絶対的なものではないとされています。
例えば、上記のうち②については、成熟していない子どもがいる場合であってもその他の事情次第では離婚が認められる場合もあるとされています。例えば、高校2年生の子どもがいる事案で、その子どもは成熟していない子どもであるけれども、間もなく高校を卒業する年齢に達していることや、夫が妻に十分な金銭の支払いをしていること等が考慮されて離婚が認められています(最判平成6年2月8日判タ858号123頁)。
なお、上記①の別居期間については、

  • ・約30年(最判昭和62年9月2日判タ642号73頁)、
  • ・約22年(昭和62年2月12日判タ662号80頁)、
  • ・約16年(最判昭和63年4月7日判タ681号115頁)、
  • ・約10年3か月(最判昭和63年12月8日家月41巻3号145頁)、
  • ・約9年8月(最判平成5年11月2日家月46巻9号40頁)
  • ・約8年(最判平成2年11月8日判タ745号112頁)
  • ・約6年(東京高判平成14年6月26日家月55巻5号150頁)

であり、短期化の傾向が認められますが、約8年間の別居期間を長期間とはいえないとして離婚を認めなかった事案もありますので(最判平成元年3月28日判タ699号178頁)、8年程度が分岐点になるように思われます。裁判例を検討する限り、この別居期間の長さは、夫婦の年齢や、今までの同居期間、離婚する際に支払う金額等次第で変わってくるもののようです。