長期間別居し、その後に離婚が成立した場合、別居期間についても2分の1の年金分割を受けることができるのでしょうか。

 この点について、裁判例(大阪高等裁判所決定平成21年9月4日)は、「年金分割は、被用者年金が夫婦双方の老後等のための所得保障としての社会保障的機能を有する制度であるから、対象期間中の保険料納付に対する寄与の程度は、特別な事情のない限り、互いに同等とみて、年金分割についての請求すべき按分割合を0.5と定めるのが相当である」とし、その趣旨について、「夫婦の一方が被扶養配偶者である場合についての厚生年金保険法78条の13(いわゆる3号分割)に現れているのであって、そうでない場合であっても、基本的に変わるものではないと解すべき」としています。

 すなわち、平成20年5月1日以後に離婚等(扶養関係のある事実婚の解消を含みます。)し、「婚姻期間中に、平成20年4月1日以後の国民年金の第3号被保険者期間中の厚生年金記録等(共済組合等の組合員である期間を含みます。)がある」場合、国民年金の第3号被保険者であった方からの請求により、自動的に、相手方の厚生年金記録等が2分の1ずつ分割されます(この制度を3号分割といいます。)。合意分割の場合(平成20年4月1日より前の期間や、国民年金の第3号被保険者には当たらない場合)であっても、3号分割の場合と不均衡が生じないように、裁判所は、「特別な事情のない限り」年金分割についての請求すべき按分割合を0.5と定めるのが相当と判断しているのです。

 過去の裁判例では、「特別な事情」が認められたケースは極めて少なく、長期間別居があったということのみでは「特別な事情」があったとは認められていません。裁判例(東京家庭裁判所審判平成20年10月22日)では、婚姻期間30年のうち約13年間別居していた事例において、「法律上の夫婦は、互いに扶助されるべき義務を負っており(民法752条)、仮に別居により夫婦間の具体的な行為としての協力関係が薄くなっている場合であっても、夫婦双方の生活に要する費用が夫婦の一方または双方の収入によって分担されるべきであるのと同様に、それぞれの老後等のための所得保障についても夫婦の一方または双方の収入によって同等に形成されるべき」として、婚姻期間30年間(別居期間約13年を含む)の年金分割について請求すべき按分割合を0.5と定めるのが相当であると判断されています。

 もっとも、裁判例は、「特別な事情」がある場合には例外的な判断がなされる余地を残していますから、長期間の別居がある場合や、離婚の有責性が認められるような場合の年金分割については、まず弁護士にご相談ください。