2019年12月23日、家庭裁判所において養育費・婚姻費用を決める際に活用されている養育費・婚姻費用の算定表が改定されました。

従前の算定表は2003年に提案されたもので、15年以上に渡り利用されてきましたが、社会情勢、経済情勢の変化、少子化傾向による子どもに関連する費用の増加等を受けて、算定表による養育費・婚姻費用は低額すぎるのではと議論がされてきました。

2016年11月15日には、日弁連(日本弁護士連合会)において、養育費・婚姻費用の新算定表が作成されました(※今回の改定された算定表とは異なりますので、ご注意下さい。)が、実務では従前の算定表が利用され続けており、見直しの必要性が指摘されていました。

このような経緯で、今回の養育費・婚姻費用の算定表の改定に至りました。

養育費・婚姻費用の算定表について、大きく改定されたのは、以下の2点です。

1.全体的に一般的には、養育費・婚姻費用が増額傾向となります。

(※全ての事案で増額するわけではありませんので、個別の事案はご相談ください。)

今回の改定では、基礎収入割合(基礎収入割合とは、夫婦の収入に占める生活費の割合のことです。)が変更となり、おおむね割合が大きくなりましたので、これに対応して、養育費・婚姻費用の金額が増額することになります。

具体的には、以下のとおり変更となりました。

① 給与所得の場合

【改定前】

給与収入
~1,000,000 42
~1,250,000 41
~1,500,000 40
~2,500,000 39
~5,000,000 38
~7,000,000 37
~8,500,000 36
~13,500,000 35
~20,000,000 34

【改定後】

給与収入
~750,000 54
~1,000,000 50
~1,250,000 46
~1,750,000 44
~2,750,000 43
~5,250,000 42
~7,250,000 41
~13,250,000 40
~14,750,000 39
~20,000,000 38

※給与収入は、原則として、源泉徴収票の「支払金額」によります。

② 事業所得の場合

【改定前】

事業所得
~4,210,000 52
~5,260,000 51
~8,700,000 50
~9,750,000 49
~11,440,000 48
~14,090,000 47

 

【改定後】

事業所得
~660,000 61
~820,000 60
~980,000 59
~2,560,000 58
~3,490,000 57
~3,920,000 56
~4,960,000 55
~5,630,000 54
~7,840,000 53
~9,420,000 52
~10,460,000 51
~11,790,000 50
~14,820,000 49
~15,670,000 48

※事業所得は、確定申告書の「課税される所得金額」に基づき認定されることになりますが、一定の控除等については加算する必要がありますので、個別にご相談ください。

2.15歳未満の子どもの養育費・婚姻費用が増額傾向となります。

(※全ての事案で増額するわけではありませんので、個別の事案はご相談ください。)

今回の改定では、子どもの生活費指数(親を100とした場合の子どもに充てられるべき生活費の割合です。)が変更となりました。

具体的には、15歳未満の子どもの生活費指数が改正前の55から62に増加しましたので、これに対応して15歳未満の子どもの養育費・婚姻費用は増額傾向となります。

一方で、15歳以上の子どもの生活費指数は、改正前の90から85に減少しましたので、これに対応して15歳以上の子どもの養育費・婚姻費用は減額傾向となります。

では、具体的な事案で、養育費・婚姻費用がどの程度変更となったかみていきましょう。

【事案】

父の収入(給与所得) 1200万円、母の収入(給与所得)100万円。
長男(16歳)は父と同居、長女(13歳)は母と同居。

(※このような複雑な事案については、公表されている養育費・婚姻費用の算定表で簡易に養育費・婚姻費用を算定することができませんので、ぜひ弁護士にご相談ください。)

【改定前】

婚姻費用 約13万8000円
養育費 約7万1000円

【改定後】

婚姻費用 約16万5000円
養育費 約9万1000円

※実際には、個別事情も考慮した上で養育費・婚姻費用が決められることになりますので、個別の事案はご相談ください。

なお、すでに養育費等の取り決めをしている場合は、今回養育費・婚姻費用の算定表の改定があったという事情のみでは、従前取り決めた養育費等の額を変更すべきではないと考えられています。

もっとも、養育費・婚姻費用の算定表の改定以外に、父母の収入の変化、父母の再婚、子どもの出産等の事情の変更があったような場合には、養育費等の額の変更が認められる余地がありますので、ご相談ください。

これから養育費等の取り決めをされる方、すでに養育費等の取り決めをしているけれど、事情の変更により養育費等を見直されたいという方は、ぜひ鴻和法律事務所の離婚専門部の弁護士にご相談ください。

令和2年1月30日 鴻和法律事務所 離婚専門部