長年婚姻生活を続けられたものの、配偶者の退職・子どもの独立等をきっかけとして離婚を希望される方も増えてきました。
しかしながら、配偶者が離婚に同意しない場合、「離婚理由」が認められない限り離婚することはできません。また、熟年離婚するためには、離婚後の経済的な基盤を築きあげることができるかが最大の課題となります。
そこで、ここでは、「熟年離婚」するに際し直面する問題を取り上げていきたいと思います。

離婚理由

子どもが独立したことをきっかけとして、これからの人生は自分一人で自由きままに生活したい!、相手とは性格の不一致がありこれまで我慢してきたけど、もうこれ以上我慢できない!などとお考えになり、離婚を希望されたとしても、長年連れ添ってこられた配偶者がすんなりと離婚に合意されることは稀だと思われます。
そのような場合には、離婚理由が「婚姻を継続しがたい重大な事由」(民法770条1項5号)に該当しなければ離婚することが難しくなります。様々な事由が「婚姻を継続しがたい重大な事由」に該当し得ますので、詳細については是非弁護士にご相談ください。

年金分割

①平成20年4月1日以後の②国民年金の第3号被保険者期間中における相手方の厚生年金記録(標準報酬月額・標準賞与額)を分割する場合には、「3号分割」という手続きにより、当事者の合意を要することなく一方的に、相手方の厚生年金記録(標準報酬月額・標準賞与額)を2分の1ずつ、分割することができます。
しかしながら、熟年離婚の場合には、結婚してから平成20年4月1日までの期間が長く、その期間中の年金分割をするためには、年金分割について配偶者との合意が必要となります。配偶者と直接話をして合意することができない場合には、家庭裁判所に調停を申し立てて年金分割を行うことができます。調停で合意が成立しなかった場合には、手続は自動的に審判に移行し、裁判官の判断を得ることができます。

財産分与

熟年離婚する場合、これまでご夫婦で築きあげた財産も相当な額になっていることもあると思いますが、その財産が夫婦一方のみの名義になっていることも多いです。この場合、きちんと離婚に伴う財産分与の手続きをしておかなければその財産が全て名義人のものとなってしまいます(離婚時から2年を経過すると財産分与の請求ができなくなります)。
また、長年夫婦生活を続けていると、夫婦双方の財産が分散されて(様々な金融機関に預金されていたり、株式等に投資していたりします)、その全てを把握することが困難な状況に陥っていることがあります。
弁護士にご依頼された場合には、専門的な手法により相手方名義の資産をある程度明らかにすることも可能ではありますが、もれなく夫婦で築きあげた財産全てについての財産分与を実現する為には、離婚をきりだす前から、夫婦間にどのような財産がどれだけあるのかについて逐一確認しておくことが重要となります。
また、近々、配偶者に退職金が支給されるという場合には、現時点においても退職金が財産分与の対象となり得ますので、退職金についても忘れずに財産分与の対象としましょう。
なお、一般的には財産分与では夫婦双方が財産を1/2ずつ取得しますが、これはいわゆる「清算的財産分与」でありこれまで夫婦で築きあげてきた財産を清算するという意味合いのものです。一方、離婚により、配偶者の一方が経済的に困窮する場合には、「清算的財産分与」に加えて「扶養的財産分与」がなされることがあります。熟年離婚の場合、離婚により夫婦の一方が経済的に困窮する場合には、この扶養の意味も込めて、1/2にこだわらず、または、一定期間一方が他方に費用を支払い続ける等の内容で財産分与する場合もあります。

仮差押え

近い将来離婚し財産分与する可能性があるが、配偶者が預金や近々支給される退職金を消費・隠匿する可能性がある場合などは、予め、仮差押えの手続きをしておかなければ、財産分与する時点において対象となる財産がなくなっているということも想定されますので、この点には気をつけておきましょう。