婚姻費用や算定表の金額は、裁判所のホームページからも見ることのできる養育費・婚姻費用算定表(http://www.courts.go.jp/tokyo-f/vcms_lf/santeihyo.pdf)を参考に決定されます。

この算定表は、婚姻費用や養育費の支払義務者の収入(年収)と、権利者の収入(年収)を照らし合わせればいいだけなので、素人が見ても非常に分かり易いように作られています。

ただ、この算定表が想定している収入(年収)は、その金額に応じた実収入と支出の一般的な割合を前提にしていますので、収入(年収)の数字だけに注目して婚姻費用や養育費を算定表で決めると損をすることがあります。

例えば、婚姻費用(夫婦のみ)の支払いを求める権利者の収入(年収)が180万円で、義務者の収入(年収)が1200万円だったとします。

この場合、収入(年収)の数字だけに注目して婚姻費用を計算すると、算定表では月額約14万5000円になります。

しかしながら、この事案で、婚姻費用(夫婦のみ)の支払いを求める権利者の収入(年収)のうち、実は60万円以上が交通費だったという事情があった場合はどうなるでしょうか(会社の経理等の対応が不適切であるなどの理由により、このような事態は生じ得ます)。

既にご説明したとおり、算定表では、その金額に応じた実収入と支出の一般的な割合を前提に計算がなされています。
そのため、例えば、この事案のように収入(年収)が180万円の方については、月額2255円(年額2万7060円)程度の交通費しかかかっていないという前提で計算がなされています。

ですので、この事案のように、収入(年収)は一応180万円だけれども、そのうち60万円以上が交通費なので、実収入は算定表が想定しているよりも少ない方について、収入(年収)の数字にだけ着目して算定表で計算をしてしまうと、損をしてしまうことになりかねません。

この場合、算定表は、収入(年収)が180万円の方については、月額2255円(年額2万7060円)の交通費しかかかっていないと考えているわけですから、60万円以上も交通費がかかってしまっている場合は、その交通費は収入(年収)から差し引いて考えるべきで、収入(年収)は120万円程度と考えるのが適切ということになります(千葉家審平成27年2月27日Westlaw掲載参照)。

このような前提で、計算をし直すと、婚姻費用(夫婦のみ)は月額約15万5000円となりますので、交通費に着目しただけで、月額約1万円も金額が変わってきます。

このように、算定表は素人が見ても非常に分かり易く作られていますが、その計算方法には理屈がありますので、具体的な事情を無視して婚姻費用や養育費を計算してしまうと損をするおそれがあります。

婚姻費用や養育費が本当に妥当な金額か心配な場合には、是非当事務所までご相談ください。