①財産分与の対象となる財産の確定はいつの時点を基準とするのでしょうか、また、②財産分与の対象となる財産の評価はいつの時点で行うのでしょうか。

①については、別居時か離婚時(訴訟の場合には口頭弁論終結時)かで争いがありますが、この点に関する最高裁昭和34年2月19日判決は、財産分与については「当事者双方がその協力によって得た財産の額その他一切の事情を考慮」すると定めた民法768条3項にいう「一切の事情とは当該訴訟の最終口頭弁論当時における当事者双方の財産状態の如きものも包含する趣旨と解するを相当とする」として離婚時基準説に立ったとされています。もっとも、この判例が積極的に財産分与の基準時を口頭弁論終結時とすべきであるとしたものではないと解されています。本来、財産分与の判断の基準時は要素ごとに考える必要があり、財産分与は夫婦が協力して築き上げた財産を分与するものである以上、夫婦の協力関係がなくなったとき、すなわち、別居時を基準と考えるのが理論的であり、これによる裁判例も存在します。ただし、別居後直ちに夫婦としての協力関係が消滅しないということもあります(別居後も協力して事業を行い財産を築き上げた場合等)。

そこで、財産分与については、原則として別居時を基準として考え、公平の見地から別居後の事情も加味した方がいい場合には離婚時を基準と考える等、柔軟に対応せざるを得ないものと考えられます。
②については、不動産や株式等については、その時価の変動は夫婦の協力とは無関係であることから、基本的には、離婚時の時価を基準とするとされています。住宅ローン・預貯金・保険などは別居時の金額となります。