私には数年前に離婚した元夫との間に現在18歳になった子どもがおり、元夫が親権者となりました。離婚後、元夫は仕事を辞めて音信不通となり、私はずっと子どもと面会することができず、生活状況が分かりませんでした。 ところが、最近子どもからわたしに電話がかかってきて、元夫は無職で子どもを殴ったり脅したりして子どものバイト代を奪い取り、パチンコ等に費消しているとのことでした。さらに、子どもが一人暮らしをする家を借りるための保証人になることを拒否し、携帯電話を購入することにも同意しないそうです。このままでは子どもはいつまでたっても自立できず、父親のもとを離れられません。子どもを守るためにはどうすればよいでしょうか?
離婚後、親権者となった元配偶者の子どもに対する親権の行使が不適切であり、自分が引き取って育てたいと思われる場合には、通常、親権者・監護者(親権者ではないが子どもとともに生活して子どもを養育する権限をもつ者)を変更するための手続を行います。 しかし、これには一定程度の時間がかかりますので、子どもが暴力をふるわれているおそれがあるような場合には、さらに迅速な手続をとる必要があります。元配偶者の親権の行使が著しく不適当であり、そのことにより子どもの利益を著しく害するときには、親権を喪失させることとあわせて親権者に代わって親権を行使する者として自らを選任するよう家庭裁判所に申し立てるという方法があります。後者は、保全処分という、特に迅速性を要する場合に使う手段です。 しかし、親権喪失は認められるための要件がそれなりに厳しく、また戸籍にも記載されるため、子どもと従来の親権者との関係修復が困難となってしまう可能性があります。 そこで、平成23年より、親権は喪失させないが一時的に停止させる制度が使えるようになりました(民法834条の2)。この親権停止は、喪失に比べると認められる要件が緩い上、2年と効力が続く期間が限定されているため、後に親子関係を修復できる可能性のある場合などにも使いやすいといえます(2年を超えて停止させたいときには、再度申立てを行います)。この親権停止と上記の保全処分をあわせて申し立てることによって、数日で判断がなされた実際のケースもあるようです。これらの申立ては書面を家庭裁判所に提出しなければなりませんが(家庭裁判所に聞けば雛形を交付してもらえます)、相手方の親権者に見せたくない書面については、非開示申出書を添付すれば裁判所も一定程度配慮してくれます。 なお、18歳未満の子どもが虐待を受けていると思われる場合には、行政機関としては児童相談所が窓口となって対応します。上記の親権停止が行われる前であっても、必要性があると判断されれば、親権者の同意なく親権者から子どもを引き離す一時保護という措置がとれる可能性もあります。法的なアドバイスとあわせて、最寄りの児童相談所に相談されることをお勧めします。