サラリーマン家庭の離婚は、ご相談いただくことが多い案件の一つですが、決して単純なものではなく、財産分与、年金分割等、トラブルとなることは少なくありません。ここでは、サラリーマン家庭の離婚において、特に留意すべき点をご説明します。

財産分与

財産分与のトラブルを回避するためには、財産分与の対象となる夫婦共有財産を正確に把握する必要があります。
一般的に、サラリーマン家庭の夫婦共有財産としては、①不動産、②預貯金、③保険、④勤務先における積立金(財形貯蓄等)、⑤有価証券(株式等)、⑥自動車、⑦退職金、⑧企業年金、⑨住宅ローン等の負債、等の財産が想定されます。

このうち、④勤務先における財形貯蓄等の積立金については、毎月の給与やボーナスからの控除等により、本人や配偶者が自覚しないうちに、財産が形成されているケースがあります。また、⑤株式等の有価証券については、近年では、従業員に自社株を保有させている会社も多く見られますが、これについて、本人や配偶者が正確に把握していないケースがあります。その他、③保険についても、勤務先を通じて保険に加入しているため、これについて、配偶者が把握していないケースもあります。
これらの隠れた財産については、離婚協議の際にきちんと調査を行う必要があります。給与明細等を見せていただくことにより、指摘できることも多くありますので、まずはご相談ください。

また、⑦退職金について、財産分与基準時に自己都合退職した場合に退職金が発生するようなケースでは、一般的に、婚姻期間中に形成された退職金部分が夫婦共有財産と評価されます。そして、会社によっては、退職金の他に、⑧企業年金の制度がある会社もあり、この企業年金についても、財産分与の対象となり得ますので、注意が必要です。
何が財産分与の対象となるのか、正確に把握し、その証拠を収集するためには、専門的知識や経験が必要となります。是非、鴻和法律事務所の弁護士へご相談ください。

年金分割

サラリーマンとの離婚の場合には、年金分割を行う必要があります。
①平成20年4月1日以後の②国民年金の第3号被保険者期間中における相手方の厚生年金記録(標準報酬月額・標準賞与額)を分割する場合には、「3号分割」という手続きにより、当事者の合意を要することなく、一方的に、相手方の厚生年金記録(標準報酬月額・標準賞与額)を2分の1ずつ、分割することができますが、これ以外のケースで年金分割を行うためには、当事者の合意が必要となります。
離婚後に紛争を持ち越さないためにも、離婚の際には、忘れずに年金分割を行う必要があります。
年金分割の諸問題については、こちらをご確認ください。

強制執行等

サラリーマンである相手方が、調停や審判、裁判で定められた、婚姻費用、養育費、財産分与、慰謝料等を支払わなかった場合には、強制執行により、相手方の給与を差し押さえることができます。
また、離婚協議中(または調停、裁判中)のサラリーマンである相手方が退職間近である場合には、離婚が成立する前に相手方が退職金を費消、隠匿することがないように、退職金について仮差押えを行った方が良いケースがあります。
差押え、仮差押えの手続きは、一般の方にとっては煩雑で難しいものですので、是非弁護士にご相談ください。